
先に結論
- 細かく押し固めた粉は湯をほとんど通さないので、9気圧前後の圧で押し通します。
- ふだんの圧の範囲では、圧を上げても湯の速さは上がり続けず、時間は粉の詰まり方で決まります。
- 家では圧を動かさず、挽き目と粉の量で18gから36gを25〜30秒に合わせます。
この記事の前提
デディカ EC685 のような家庭用マシンで、粉18gから36gを25〜30秒で出す基準から淹れている前提で書いています。
目次(7)
エスプレッソの説明には、9気圧と25〜30秒という数字がよく出てきます。デディカのようなマシンで淹れていると、なぜその数字なのか、ずれたら何を直すのかで迷います。
エスプレッソは、湯をほとんど通さない細かい粉の層に、9気圧前後の圧で湯を押し通して淹れます。押す圧がそろっていても、湯が抜ける速さは粉の層の詰まり方で決まります。家では圧を動かさず、挽き目と粉の量で25〜30秒に合わせます。
| 数字 | 出どころ | 家で動かすもの |
|---|---|---|
| 9気圧前後 | 規格は8気圧以上。研究は9気圧で泡と香りがそろった | 動かさない |
| 25〜30秒 | 規格は20〜27秒。デロンギは約25〜30秒 | 挽き目・粉の量 |
| 粉18gから36g | 自宅エスプレッソ入門の基準 | はかりで量る |
細かい粉の層は、湯をほとんど通さない
ハンドドリップでは、湯が自分の重さで粉の層を落ち、基本レシピでは2分30秒で淹れ終えます。エスプレッソの粉はずっと細かく、フィルターの中で押し固めます。粒のすき間がとても小さく、湯を注いだだけでは、湯が粉の上にたまってゆっくり落ちます。
イギリスのバーミンガム大学などの研究(2015年)は、エスプレッソの粉の層の湯の通りやすさを測りました。粉の層の通りやすさが湯の流れる速さを決め、その速さが淹れる時間を決めると述べています。
デロンギは、エスプレッソを「細かく挽いた粉に高い圧で湯を押し通して作る濃いコーヒー」と説明しています。細かい粉から短い時間で成分を出すために、圧で湯を押します。挽き目で溶け出す速さが動く理由は「細かく挽くほど粉の表面積が増え、成分が早く溶け出す」に書きました。
微粉と湯の通り
スイスのチューリッヒ応用科学大学の研究(2024年)では、100µmより小さい微粉が増えると湯の通りが悪くなり、抽出の時間がのびました。エスプレッソの微粉は、おもに湯の通りを通して時間を動かしていました。
圧を上げても、湯の速さは上がり続けない
圧を上げれば湯が速く抜けそうに思えます。ポーランドのワルシャワ大学などの研究(2025年・査読前の論文)は、1〜12気圧で湯の流れを測りました。低い圧では、圧に合わせて流れが増えました。ふだん淹れる圧の範囲では、圧を上げても流れが増えにくくなりました。
研究者は、圧が粉の層を押し縮め、粒のすき間が狭くなるためと説明しています。強く押すほど層が詰まり、湯の通り道が細くなります。抽出の時間は、圧の数字より粉の層の詰まり方で決まります。
- 低い圧:圧に合わせて流れが増える
- ふだんの圧:圧を上げても流れが増えにくい
- 時間を動かすもの:挽き目・粉の量・押し固め方
9気圧前後で、泡と香りがそろうという研究がある
スペインのナバラ大学は2002年に、7・9・11気圧で淹れ比べました。11気圧のエスプレッソは、泡と味の特徴で7気圧と9気圧のものから分かれました。9気圧では泡がそろい、新鮮さや果実、麦芽、バターのような香りの成分の割合が高くなりました。
イタリアのカメリーノ大学の研究(2012年)は、温度と圧を組み合わせて香りの成分と味を調べました。ふだんの機械の設定の92度・9気圧が、いちばん良いエスプレッソの条件にとても近いという結果でした。
イタリアの伝統的なエスプレッソの規格(2018年版)は、抽出の圧を8気圧以上と決めています。ワルシャワ大学の論文は、9気圧という標準が、初期のレバー式の機械で出せた力にさかのぼるとよく言われると書いています。9気圧という数字は昔からの決まりで、研究でも泡と香りの良い結果が出た圧です。
抽出の時間は、規格と研究で幅が分かれる
イタリアの規格は、1杯の粉を7〜9g、カップの量を13〜26g、抽出の時間を20〜27秒としています。デロンギは、押し固めた粉に約25〜30秒で湯を通すと説明しています。自宅エスプレッソ入門の記事では、ダブルで粉18gから36gを25〜30秒で出す基準にしています(自宅エスプレッソ入門|デロンギ デディカで淹れる本格ラテの作り方)。
短い時間を勧める研究もあります。アメリカのオレゴン大学などの研究(2020年)は、粉を20gから15gに減らして粗めに挽くと、25秒かかるところを7〜14秒で淹れても味が保てると発表しました。細かい挽き目では湯の流れがむらになり、毎回の味がそろいにくいという結果でした。
| 出どころ | 粉 | 時間 |
|---|---|---|
| イタリアの規格(2018年) | 7〜9g | 20〜27秒 |
| 自宅エスプレッソ入門の基準 | 18g(36g出す) | 25〜30秒 |
| オレゴン大学など(2020年) | 15g・粗め | 7〜14秒 |
25〜30秒は、毎回の味を比べるための目安の幅として使います。時間を決めておくと、挽き目や粉の量を動かしたときに、前の回と比べやすくなります。
家では圧を動かさず、挽き目と粉の量で時間を合わせる
デディカ EC685 は、デロンギの仕様でポンプの圧が15気圧です。圧を手で変える仕組みは無いので、時間は挽き目、粉の量、タンピング(粉を押し固めること)で合わせます。
- 粉18gをはかりで量り、36g出るまでの時間を測ります。
- 25秒より前に36gに届いたら、挽き目を1段細かくします。
- 30秒を過ぎても36gに届かなかったら、挽き目を1段粗くします。
- 挽き目を動かしても合わないときに、粉の量やタンピングを見直します。
速く落ちるときの直し方は「エスプレッソが薄い・速く落ちるときは、挽き目とタンピングを直す」にまとめています。細かい挽き目を1段ずつ動かすには、極細の範囲を細かく合わせられるミルを使います(エスプレッソ用のミルは、極細挽きの微調整ができるものを選ぶ)。
よくある質問
デディカは15気圧ですが、9気圧より強く淹れていますか
デロンギの仕様の15気圧は、ポンプの圧の数字です。粉の層の中では、圧を上げても湯の速さが上がり続けないという研究があります。家では圧の数字より、18gから36gが25〜30秒で落ちるかで確かめます。
付属の加圧式フィルターは、圧を足す仕組みですか
加圧式(二重底)のフィルターは、底の小さな穴で湯の出口をしぼり、粉が粗めでも圧がかかるように作られています。挽き目の差が出にくいので、市販の粉でも淹れられます。挽き目で時間を合わせたいときは、非加圧のフィルターに替えます。
30秒より長くかかるときは、どうしますか
挽き目を1段粗くします。それでも長いときは、粉を少し減らすか、タンピングの力を弱めます。1回に動かす数字は1つにします。
7〜14秒で淹れる方法は、家でも使えますか
オレゴン大学などの研究は、15gを粗めに挽いて短く淹れる方法を示しました。家のマシンと豆で同じ味になるかは、自分で比べて確かめます。まず25〜30秒の基準で淹れて、味をそろえてから試します。
参考にした研究と公式情報
- ナバラ大学:Influence of water pressure on the final quality of arabica espresso coffee(J. Agric. Food Chem., 2002)(2026-10-31確認)
- カメリーノ大学:Optimization of espresso machine parameters through the analysis of coffee odorants by HS-SPME-GC/MS(Food Chemistry, 2012)(2026-10-31確認)
- バーミンガム大学ほか:A new methodology to estimate the steady-state permeability of roast and ground coffee in packed beds(Journal of Food Engineering, 2015)(2026-10-31確認)
- チューリッヒ応用科学大学:The role of fines in espresso extraction dynamics(Scientific Reports, 2024)(2026-10-31確認)
- ワルシャワ大学ほか:Under pressure: poroelastic regulation of flow in espresso brewing(arXiv, 2025・査読前)(2026-10-31確認)
- オレゴン大学:UO chemist helps find path to consistently good espresso(Matter, 2020 の発表)(2026-10-31確認)
- Disciplinare Caffè Espresso Italiano Tradizionale 2018(イタリアの伝統的なエスプレッソの規格)(2026-10-31確認)
- デロンギ:Espresso coffee: what you need to know(2026-10-31確認)
- デロンギ:Dedica Style EC685.M の仕様(2026-10-31確認)