
この記事の前提
ハンドドリップで、粉15g・湯250ml・湯温90〜93度・2分30秒の基本レシピから淹れている前提で書いています。
目次(7)
酸っぱいときは細かく、苦いときは粗く挽くと聞いて、ミルのダイヤルを回している人に向けて書きます。挽き目ひとつで味が動く理由が分かると、次にどちらへ何段動かすかを自分で決められます。
粉を細かく挽くと、同じ15gでも湯にふれる表面が広がり、成分が早く溶け出します。粗く挽くと表面積が小さく、2分30秒では出きらない成分が残ります。挽き目を動かすと、決まった時間の中で溶け出す量が増えたり減ったりします。
| 挽き目 | 表面積 | 2分30秒で起きやすいこと |
|---|---|---|
| 粗い | せまい | 出きらず、酸っぱい・薄い |
| 中挽き | ふつう | 基本レシピの味 |
| 細かい | 広い | 出すぎて、苦い・えぐい |
| 細かすぎる | 広いが湯の通りがむらになる | 落ちきるのが遅く、渋さが残る |
粒の表面と中で、溶け出す速さがちがう
コーヒー豆は、小さな細胞が集まってできています。豆を挽くと、粒の表面にある細胞は割れ、粒の中の細胞は割れずに残ります。
アイルランドのリムリック大学とフィリップスの研究は、湯に入れた粉の抽出を2段の動きで説明しています。まず表面の割れた細胞から成分が速く溶け出し、そのあと粒の中の細胞からゆっくり出てきます。粒の中の成分は、表面まで移ってから湯に出ます。
表面の分と、中の分
表面の分は、湯を注いですぐに出ます。中の分は、時間をかけて少しずつ出ます。挽き目を変えると、この2つの割合が動きます。
細かく挽くと表面が広がり、早く溶け出す
同じ15gの豆でも、細かく挽くほど粒の数が増え、湯にふれる表面が広くなります。表面に並ぶ割れた細胞も増えるので、湯を注いですぐに溶け出す成分が多くなります。
同じ研究グループの分析は、細かい粉では粗い粉よりずっと短い時間で抽出が進むと示しています。粒が小さいと、中の成分が表面まで移る道のりも短くなります。
細かく挽いた粉には、とくに小さなかけら(微粉)も多くふくまれます。微粉は割れた細胞のかけらで、湯にふれるとすぐに溶け出します。
- 細かく挽く:表面が広い。早く出る
- 粗く挽く:表面がせまい。ゆっくり出る
- 微粉:割れた細胞のかけら。すぐに出る
粗いと2分30秒で出きらず、酸っぱさや薄さになる
基本レシピは、粉15g・湯250ml・湯温90〜93度で、2分30秒と時間を決めて淹れます。粗い粉は表面積が小さく、中の成分も表面まで出てくるのに時間がかかります。2分30秒のうちに出きらない分が残ります。
粉が粗い、湯温が低い、時間が短いと成分が出きらず、酸味が目立ちやすくなります。色は付いているのに水っぽいときも、成分が出きっていないことが原因です。直す順番は「コーヒーが酸っぱいときは、挽き目と湯温から直す」と「コーヒーが薄いときは、粉を増やす前に挽き目を細かくする」に書いています。
酸っぱさには2種類ある
浅煎りの豆は、もともと酸味が強めです。挽き目を動かすと、成分が出きらないせいで出る酸っぱさが直ります。豆そのものの酸味は、焙煎度の違う豆に替えて調整します。豆の酸味の話は「浅煎り・中煎り・深煎りは、酸味と苦味のどちらを飲みたいかで選ぶ」にまとめました。
細かすぎると湯の通りがそろわず、むらが出る
細かく挽くほど溶け出しやすくなる一方、粉の層の中を湯が通りにくくなります。ペーパードリップでは微粉がペーパーの目をふさぎ、落ちきるまでの時間がのびます。湯にふれる時間が長くなり、苦味やえぐみが出やすくなります。
エスプレッソでは、挽き目を細かくしていくと、抽出される量がいったん増え、ある細かさを超えると減ります。イギリスとアメリカの大学などの研究チームが実験でこれを示し、細かい設定では湯が粉の層を均一に通らなくなるためだと説明しています。
後味に渋さやざらつきが残るときは「コーヒーに雑味が出るときは、微粉と湯の当て方を直す」、苦味が強いときは「コーヒーが苦いときは、湯温を下げて、抽出を短くする」に直し方があります。
細かいほど濃くなるとは限らない
細かくしすぎると、出る量がかえって減ることがあります。落ちきるまでが前の回より長くなったら、挽き目を1段粗く戻します。
挽き目は1段ずつ、ほかの数字を止めて動かす
挽き目は、溶け出す速さを大きく動かします。湯温や時間と同時に変えると、どれで味が動いたのか分からなくなります。
- 粉15g・湯250ml・湯温90〜93度・2分30秒をそろえます。
- 酸っぱい・薄いときは1段細かく、苦い・渋いときは1段粗くします。
- 同じ豆でもう一度淹れて、味と落ちきる時間を前の回と比べます。
- ちょうどよかったダイヤルの位置をメモに残します。
私はタイムモア C2 で挽いています。手挽きミルはダイヤルの目盛りで挽き目を1段ずつ動かせるので、毎回同じ位置にそろえられます。使い方は「タイムモア C2レビュー|最初の手挽きミルに向く人・後悔しない選び方」に、基本の淹れ方は「ハンドドリップ入門|1杯分の基本レシピと味を整える調整表」に書いています。
よくある質問
細かく挽くほど、成分はたくさん出ますか
ある細かさまでは、出る量が増えます。細かすぎると湯の通り道がかたより、出る量がかえって減る例をエスプレッソの研究が示しています。ペーパードリップでは落ちきるまでの時間がのび、苦味やえぐみが出やすくなります。
挽き目と湯温は、どちらを先に動かしますか
挽き目を先に1段だけ動かします。それでも味が寄らないときに、湯温を2〜3度動かします。1回に動かす数字を1つにすると、何で味が動いたかが分かります。
粉で買った豆でも、味を寄せられますか
粉で買った豆は挽き目が決まっているので、湯温と時間で寄せます。酸っぱいときは湯温を上げるか時間をのばし、苦いときは湯温を下げるか時間を縮めます。同じ豆を続けて飲むなら、豆で買って挽くと1段ずつ直せます。
参考にした研究
- University of Limerick:Modelling of coffee extraction during brewing using multiscale methods(Chemical Engineering Science, 2015)(2026-10-30確認)
- Coffee extraction kinetics in a well mixed system(Journal of Mathematics in Industry, 2016)(2026-10-30確認)
- SIAM:Asymptotic analysis of the dominant mechanisms in the coffee extraction process の紹介(2026-10-30確認)
- University of Portsmouth:Systematically improving espresso(Matter, 2020)(2026-10-30確認)